探偵 神宮寺三郎 復讐の輪舞

Novel

エピソード10 復讐の輪舞

君島親子の依頼を受けてから二週間が経過し、調査は終了した。
小さなトラブルはあったものの、弘樹たちが心配していた車や郵便受けへの被害などはなかった。
現状では、運悪く悪戯に遭った……と判断するのが妥当だろう。

「引っかかりを感じるのは、ただの気のせいか……」

俺は昨晩の弘樹の様子を思い出す。
依頼が終わり、昨夜は弘樹とバーかすみで飲んだ。
あれから、父である龍之介が他界したそうだが、他は問題なく生活しているという話だった。
裕太も変わらず元気にやっているだろうか……
俺は弘樹の忘れ物を届けるために、君島工場に向かうところだった。
駐車場に止めてあるミニのドアに手を掛ける。
その時、近づいてくる足音。

「ちょっと待てよ」

「…………」

見るからに堅気ではない、チンピラとしか言いようのない男がゆっくりと歩いてくる。
何者だ?コイツは……

「アンタ、有名な探偵さんだろ?たしか……神宮寺だっけ?」

男はミニのボンネットに手を置いた。

「何か用か?」

「何か用かって……そりゃあ、用があるから声をかけたに決まってんじゃねぇか」

男が唇の端を上げる。
同時に、俺の背後で何かを振り上げるような風が動いた。

「!」

後ろには、もう一人の別の男。
俺の頭上には、鉄パイプが振り下ろされようとしていた。
襲いかかる二人の男が、事件の幕開けを知らせる。
君島家の調査中に起こった出来事、起こらなかった出来事……
そのどちらにも、警告の意味があったのだと確信する。
相手は俺のことを知っていた、計画はすでに進んでいたのだ。
そして、始まる復讐の輪舞――――

エピソード10 復讐の輪舞

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