式神の城3

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中東欧の小国、アルカランド。

主要種族マジャール。
この他ゲルマンとスラブ、ユダヤ人他の多く入植する、人種のるつぼと言った1992年に再独立を果たしたばかりの熊本県とほぼ同じ大きさの小さな国である。
主な産業は麺作り、牧畜。
小麦で輝く黄金の夕日と湖を擁する風光明媚な国である。
政治体制はスウェーデンに範を取った立憲君主政。人口184万人。

主として経済的価値がないため、日本とも縁がなく、国交はあるが領事館は隣国のアップフェルラントにあるというていたらくである。
電力はロシアとボストニアに頼る。
以上から分かるように、ド田舎もいいところであり、よく言えば静かで忘れられた王国とも、言えなくもない。

その国で、連続失踪・昏睡事件が起きた。
それまでならよくある話だが、そこから先が違うのは、この難事件の解決に皇太女マーコ親王自らが解決に乗り出したのである。

王女マーコ・ドロネア・エーディリウスは幻視の力をもつ巫女であると国民からは信じられている人物である。

王女はおおよそ二十年ほど前の文献を元に世界最高の捜査能力を持つ日本に捜査協力をもとめた。
旧ソ連に併合されるまでは霊能力者がたくさんいたのだが、併合後の弾圧で霊能力者が少ない。
ついては古い歴史がある日本国の援助をお願いしたいという内容である。
二十年前の文献を参考にしている時点で間違っているが、捜査能力が優れている=優れた霊能力者がいるに違いないと考えたあたり、この国の想像を絶する近代性が見て取れる。

そもそも、さして厚くもないアルカランドの歴史教科書ではその特筆すべき一ページとして日露戦争時に本当にささやかながら、小国としては清水の舞台から飛び降りる気持ちで日本を支持して小さな武装ヨットを送り付けたことがあり、それ以来国民も政府も一貫して自称第一の友邦国を名乗っていたのである。
友邦なら助けてくれるのは当然であろう。そういう国は、割と多い。
日本の味方は日本の知らないところに多いという話である。

さて、途方に暮れたのは日本の外務省である。

大まじめで正式な書類で霊能力者を送ってほしい、では予算もなにも動かない。
前例がないのだった。
一応ためしに警察庁に打診して見たものの「何ば言うとっとですか」と熊本弁で返され、外務省職員は小国であれ、すげなく断るのもなんだという建前とともに、また途方に暮れた。

この危機を救ったのは、超党派で動く国会議員達である。
彼らは一度の敗戦で恩義を忘れるほど薄情でもなく、霊能力について多少理解がある程度には頭のネジが緩んでもいた。
彼らは私費を投じ、やんごとなき筋からも少々の資金援助を得て、神霊庁を動かした。
自腹という文化はいつでもそう、美しい。

困ったのは神霊庁である。
神霊庁は周辺諸国との関係に配慮して国外への能力者派遣を自粛しており、ついでに言えば、刑事捜査能力など微塵もなかった。
だがしかし、日本の御家芸は自腹だけでも、ない。

日本の御家芸と言えば、下請けも腹芸も、ある。

かくて神霊庁は復帰職員である鈴木を用いて、警察機構に協力する民間の霊能力者達と接触と契約に成功、これらを送り込むことに成功する。

アルカランドには日本外務省から善処するという旨のFAXが送られ、そのきっかり五分後に神霊庁が霊能力者を派遣するとFAXを送ってきたのである。
外務省は前例を破らないし、周辺諸国を怒らせるようなこともないが総体としての日本国は義理を果たすというウルトラCをやってのけたのである。

かくて、日本の面子は、また守られた。
大変な回り道と、少々の苦笑いとともに。